ノーモア原発公害!アピール

 2011年3月、東京電力福島第一原子力発電所(以下、福島原発)の過酷事故が発生してからすでに丸12年以上の歳月が経過しています。あの日、津波に襲われ、助けを求めていた命を救助できないまま、町を出なくてはならなかった消防団員がいました。連絡のつかない家族が無事に避難できているよう祈りながら、住民の避難誘導をしていた役場職員がいました。避難中、「福島から来たから」という理由だけでトイレを借りることを拒まれた人もいました。次々にやってくる避難者への炊き出しを手伝っていた子供たちのうえにも、水や食料を求めてスーパーに並んだお母さんの腕の中で笑っていた赤ちゃんのうえにも、放射能が降り注ぎました。母乳から、浄水処理場から、下水処理場から、セシウムが検出され、農家の人は、丹精込めてつくった作物の出荷を規制され、春本番の作付けを諦めました。

 あの日から12年余り。原発の再稼働が始まり、「グリーントランスフォーメーション」(GX)(「脱炭素社会」への移行)の名の下に、「原発最大限利用」の関連法が国会を通過しました。また、事故サイトに溜まり続ける「ALPS処理汚染水」の海洋放出も強行開始されました。そして、これらの動きにお墨付きを与える役割を果たしたのが、2022年6月17日の最高裁判決でした。この判決は、国が規制権限を行使したとしても福島原発事故は避けられなかった、だから「国に責任はない」というものです。しかし、過去の責任の否定は、将来の義務の放棄を意味します。いま、この最高裁判決のもとで、「国策民営」の原発再推進へと大きく舵が切られています。あの過酷な原発事故の反省と教訓は、どこに活かされているのでしょうか。

1. 私たちは、きわめて深刻で多種多様な形での人権侵害と環境破壊をもたらしている原発公害を再び引き起こさせないために、とくに最高裁に対し、過酷事故をもたらした国の責任を否定する不当判決を根本的に是正することを強く求めます。

2. また、日本政府に対しては、福島原発事故に伴う深刻な人権侵害と環境破壊がなお続いているという実態を踏まえ、すべての被害の全面救済と原状回復を最優先した取り組みを進めていくことを強く求めます。

3. さらに、新たな原発公害を拡大させる「ALPS処理汚染水」の海洋放出を中止し代替案を検討すること、および、老朽原発の再稼働を即時に停止することを強く求めます。

 私たちは、ここに「ノーモア原発公害!アピール」を発出し、原発公害や核災害の脅威と不安にさらされない社会をめざした独自な市民運動を立ち上げていきます。より良い未来に向け、多くの皆さまに本アピールとこれにもとづく取り組みにご賛同いただき、さまざまなご協力・ご支援等を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

2023年11月1日

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