2007 01/09 更新分

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 【寄稿】 EU景観保全条約の実施と課題セミナー

“「地元のありふれた日常性」の保全がより重要に”
▼明治学院大・『環境と公害』編集委共催▼
EU空間計画・景観部長がセミナーで強調
「ヨーロッパ景観保全条約の実施と課題」をテーマにした明治学院大学法律科学研究所と『環境と公害』編集委員会共催のセミナーが2006年11月11日11:00−14:00、東京・白金の明治学院大学法律科学研究所会議室で開かれました。主宰した明治学院大学法学部教授の磯崎博司さん(JEC常務理事)から以下のような当日の【ルポ】が寄稿されました。

「ヨーロッパ景観保全条約の実施と課題」をテーマに報告してくれたのはマゲローヌ・デジャンポン女史。
彼女はヨーロッパ評議会、空間計画・景観部長(Head of the Spatial Planning and Landscape Division Council of Europe)で、モンペリエ大学法学部卒、国際人権法および環境法を専門とする。これまでヨーロッパ人権裁判所およびヨーロッパ評議会に勤務。野生動植物、持続可能な開発、景観保全に関する部局を歴任し、ヨーロッパ景観保全条約については起草段階から携わってきている。
写真:「地元のありふれた日常性の保全の重要性を強調したデジャンポンさん

今回のセミナーの趣旨は「ヨーロッパ景観保全条約は、ヨーロッパを形作る風景・景観を保全し、次世代に伝えることを目的としている。この条約の起草および運用過程について学ぶとともに、日本の景観保全との関わりで検討する」であった。

報告は「ヨーロッパ地域において景観保全が重視されている背景、関連する条約体制と枠組み、全ヨーロッパ生物・景観多様性戦略、景観保全条約の概略とその特徴、連続地域セミナーの役割、住民参加の保証などについて」行われた。
その後、西村幸夫東京大学教授および大久保規子大阪大学教授から、日本における景観保全の現状と関連制度の概略と課題が紹介された。
その上で、景観の価値と法律上の定義、文化的側面の評価方法、住民参加の保証のための手続きと課題、東欧・南欧の新規加盟諸国の抱える問題点、運営資金の確保、都市景観と農村景観との違いなどについて質疑が行われた。
写真:デ女史と意見交換する(右へ)磯崎さん、西村さん、大久保さん
=写真はいずれも06年11月11日、東京・白金の明治学院大学で


セミナーを終えての感想は「ヨーロッパにおける景観保全の背景には、経済開発に伴う様々な面での画一化の弊害とその一方で生じる地域格差がある。その克服のためには、ヨーロッパとしての統体性が必要であるが、それは、個々の社会と文化の多様性の上に成り立つことが認識されるようになっている。特に、従来の考え方にはなかった「地元のありふれた日常性」の保全が求められるようになっている。
そのことは、文化遺産の社会的価値に関するファロ条約(2005年)によって明確に示されており、また、生物多様性条約においても地元のありふれた生物の保全の重要性は指摘されている。日本においても類似の社会状況が生じているため、景観、文化および自然の保全にあたって、ヨーロッパにおける上記の経験と課題への取り組み姿勢は、非常に示唆に富んでいる」であった。
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JEC 日本環境会議