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第22回日本環境会議・滋賀宣言


 2003年9月13日(土)〜15日(月)、「環境再生と維持可能な社会−Sustainable Societyを目指して−」という全体テーマを掲げて、「第22回日本環境会議・滋賀大会」が滋賀県立大学および滋賀大学において開催され、欧州、米国、中国、韓国からの招待者12名を含めて、延べ700名余が参加した。

 開催地滋賀県は山の稜線が県境となっており、そこにおける産業・人の暮らし・動植物の生態系が琵琶湖に深く関わり合っている。その琵琶湖は、京阪神1400万人の水源として下流域全体に影響を及ぼしている。
また滋賀県は、工業出荷額の伸びでは日本一であり、都市化にともなう人口の伸びも沖縄とならんで日本一である。つまり、戦後日本の外来型開発の典型的地域である。そのために、琵琶湖に集中的に汚染が現れ、現在産業廃棄物問題と地下水汚染が深刻な問題となっている。

 他方、琵琶湖周辺地域は、せっけん運動や富栄養化防止条例の制定に象徴されるように、足元からの環境保全への取り組みでは、先駆的な住民運動によるイニシアティブが発揮されてきた。その後も、地元の市民運動を基礎にした「菜の花プロジェクト」や再生可能エネルギーの普及運動、近江八幡市の津田内湖再生など、様々な環境保全への取り組みがねばり強く展開されている。さらにプレジャーボート規制および外来魚再放流禁止などを盛り込んだ「琵琶湖のレジャー利用の適正化に関する条例」等も制定されている。

 日本環境会議は、「第19回日本環境会議東京・川崎大会」で「環境再生」の理念を初めて提起し、「日本環境会議20周年宣言−環境破壊から環境再生の世紀をめざして−」を採択した。その後、環境再生のための総合的な政策研究をスタートさせ、第20回松江大会等を通じて議論を深めてきた。
こうした日本環境会議での議論と、滋賀県での先駆的な市民の活動の経験をふまえて、今回の大会では、『環境再生と維持可能な社会』のテーマに沿って、多くの実践例とこれからの諸課題が提出された。また、国際シンポジウムでは、戦争は最大の環境破壊であるとの提起があった。

 これらを受けて、日本環境会議は、「平和と環境再生の時代」を目指して、以下のことをここに提言する。

1)世界各地での環境再生に向けての取り組みの経験を共有し、足元から維持可能な社会を実現していくこと。
2)環境再生を環境政策の基本的な理念の1つとして位置づけ、その実現を図っていくこと。
3)維持可能な社会に向けて、市民本位の都市再生を進めること。
4)廃棄物問題への対策を、発生抑制を基本として再検討し、その上で有効な土壌・地下水汚染防止条例を制定すること。
5)市民が主体となって、流域全体のエコシステムに配慮した自然再生を、行政とともに推し進めること。
6)公害問題解決の原点である被害者の完全救済をさらに推し進めること。
7)市民が中心となって、原子力に頼らず気候変動問題をおこさないエネルギー利用を進めること。

 さらに、上記への取り組みとともに、日本環境会議は、アジア環境会議のネットワークをさらに発展させ、『アジア環境白書』の刊行を続け、APECなどの国際機関に対して政策提言できる国際組織「アジア環境協力機構」(仮称、Asian Environmental Cooperation Organization)の提案に向けて、引き続き検討する。

2003年9月15日
日本環境会議・滋賀大会


<大会概要>

21世紀環境再生国際シンポジウムの概要とその成果

欧州での「サステイナブル・シティ」(維持可能な都市社会)への挑戦とその経験、米国・ボストンでの都市再生、韓国での新しいエネルギー政策、中国での生態系回復への取り組み、日本での取り組みの経験を共有化し、環境再生に向けての課題を明らかにした。
そしてこれからの課題として、環境政策をそれ自体で完結するものとしてではなく社会経済システムを変えるものとすること、そのためにはまず開発政策を転換して内発的発展を実現することが必要であることが提起された。

分科会の概要とその成果

 分科会の報告と議論では、以下の事項が確認された。

第1分科会:まだ止まぬ地域環境の破壊−廃棄物、土壌・地下水汚染−

青森・岩手県境の産業廃棄物不法投棄事件、滋賀県栗東市の産業廃棄物処分場による地下水汚染、福井県敦賀市の廃棄物処分場による河川・地下水汚染、大阪市高見フローラルタウンの土壌汚染、滋賀県野洲川下流域の地下水汚染などの事例報告と討論を通じて、日本の廃棄物処分場による環境汚染、市街地の土壌・地下水汚染が深刻な状況にあることを明らかにした。そして、地域環境の再生をはかるためには、廃棄物、土壌・地下水汚染問題の克服が、緊急かつ重要な課題であることを確認した。

第2分科会:自然との共生、そして再生

大自然としての琵琶湖は、景観から鳥・魚・昆虫・植物と豊かな生態系、そして、農業・漁業・ヨシ産業や文化を育んできた。しかし、人間は多くの犠牲を琵琶湖に課してきた。そこで、琵琶湖のレジャーに関する条例、外来魚問題、さらに内湖機能の確認とヨシ原の再生活動、また霞ヶ浦における市民型公共工事の事例、淀川流域委員会からの報告をもとに、流域で考え、市民の主体的発想に基づく「自然との共生そして再生」を行動に移す重要性を確認した。

第3分科会:公害被害の実態と救済−日韓中における事例交流を中心に

日本の東京大気汚染公害訴訟と薬害ヤコブ病訴訟、中国の水質汚濁事件など近時の環境訴訟、また韓国のメヒャンリ(梅香里)の米軍射爆場の騒音訴訟と大気汚染についての報告と討論により、中・韓・日の公害被害者の救済に向けた取り組みが交流され、各国の貴重な成果とともに公害被害者の救済こそが公害問題解決の原点であることが確認された。公害被害者の救済をテーマにした3カ国による交流は今回が初めての試みであり、こうした交流と討論を今後も一層親密に行うことが必要である。

第4分科会:サステイナブル・ソサエティとエネルギー

 維持可能な社会を形成する上で、現行のエネルギー利用のあり方を根本的に変えることはきわめて重要な課題である。現行のエネルギー政策は、もんじゅ裁判での高裁判決で大きな転換期を迎えている。一方、滋賀県ではじまった市民共同発電所の取り組みは、いまや全国に爆発的に広がり、北海道、青森、秋田では市民共同出資による大型風車が設置されている。21世紀の持続可能なエネルギーシステムをつくるには、市民の力が決定的に重要である。


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