第25回東日本多重災害復興再生政策検討委員会全体会合
 2015年9月25日(金)13:00-17:30 株式会社農林中金総合研究所大会議室にて
 第25回の全体会合では、山川剛士氏(東京新聞脱原発取材班キャップ)、飛田晋秀氏(写真家・福島県三春町在住)からそれぞれ報告が行なわれ、フロアとの間で質疑応答・意見交換がなされた。その後、今後のJEC検討委員会の取り組み方針とスケジュール案について、寺西委員長から説明が行なわれた。
(文・写真:石倉研)
報告1:山川剛士氏(東京新聞脱原発取材班キャップ)
「東京電力福島第一原発 汚染水問題、廃炉作業のいま」
 山川氏からは、東京電力福島第一原発の汚染水問題や廃炉作業の現状と課題についての報告が行なわれた。まず汚染水問題の現状として、核燃料の冷却水300トンに、建屋に流入した地下水300トンが混ざり、1日当り600トンの汚染水が生じていること、そのうち除染装置で処理し、冷却水として再利用する分を除いた300トンが、タンクに貯められていることが説明された。東電の汚染水問題への認識が甘く、対応が遅かったため、長期化しているとの指摘がなされた上で、現在では地下水流入量を減らすために、地下水を上流部で抜き取ったり、除染をした上で海に放出したりしていることや、遮水壁設置による汚染拡大防止を行なっていることが提示された。対策を通じて、当初に比べリスクは低減したが、冷却が続 く間は高濃度汚染水が発生し続けることに変わりはないとの指摘がなされた。
 続いて、廃炉作業については、依然として険しい道のりであることが示された。溶融した核燃料の取り出しには、格納容器の水漏れを止めることが不可欠となるが、もし水漏れを止めることができないのであれば、石棺も選択肢として考えられうるとの指摘がなされた。廃炉まで30〜40年かかると政府は述べているが、その根拠は薄く、技術開発を行ないながら、一歩ずつ作業を進めていくことの必要性が強調された。
 報告後の質疑応答では、吸着剤で集めた放射性物質の処理処分問題や、廃炉作業員の被曝問題など、多岐に渡る点について議論が行なわれた。
汚染水問題と廃炉作業について報告される
山川氏

報告2:飛田晋秀氏(写真家・福島県三春町在住)
「福島の現地からの報告ー被災者の健康問題を中心にー」
 飛田氏からは、震災以降、原発事故避難地域に20回ほど入ってきた経験を踏まえ、現地の写真を示しながら報告が行われた。除染完了と謳われていても依然として高い空間線量地点の様子や、帰還困難区域における家畜の野生化・荒廃の進む住居の現状、当時の姿のままとなっている大熊町オフサイトセンター内部の状態など、現地の状況が写真を通じて示された。汚染土壌を収納したフレコンバックには、破れて雑草が伸びているものも見受けられ、ここから更なる被災が懸念されるとの指摘がなされた。
 健康問題に関しては、福島県で小児甲状腺がんが138人見つかっており、肺に転移している人もいるとの指摘がなされた。因果関係は不明だが、稽留流産をした妊婦や突然心筋梗塞で亡くなる人も他地域に比べ多いようであり、今後、しっかりとした調査を行いながら、事実の提供を行なうことが必要であるとの説明がなされた。
 質疑応答では、フレコンバックの管理・処分を巡る課題や、健康影響の評価・対策に関する点などについて議論が行なわれた。特に、内部被曝の問題に関しては今後も注視する必要があることが確認された。
被災地の現状と健康問題について報告される
飛田氏

JEC検討委員会の今後の取り組みについて
 
 寺西委員長より、今後のJEC検討委員会の取り組みとして、「原発被災自治体再生検討チーム」(仮)の立ち上げに関する提案がなされ、フロアとの間で意見交換が行なわれた。特に財政面に絞った分析を行なうことや、外部の研究者としての強みを活かしていくことなどが指摘され、活発な意見交換がなされた。最後に、今後のスケジュール案についての確認が行なわれ、第25回の全体会合は閉会となった。

 
JEC 日本環境会議