第11回東日本多重災害復興再生政策検討委員会全体会合
 2012年11月30日(金)15:00-17:30 株式会社農林中金総合研究所会議室にて
 第11回の全体会合では、震災復興財政をテーマに、宮入興一氏(愛知大学教授)と井上博夫氏(岩手大学教授)が報告しました。その後、両氏とフロアとの間で質疑応答・意見交換が行われました。
(文:藤谷岳 写真:吉村武洋・石倉研)
報告1:宮入興一氏(愛知大学教授)
「震災復興行財政をめぐる諸問題と今後の諸課題」
 宮入氏は、まず、東日本大震災の災害像の特徴と、問われている「この国のあり方」について、5つの観点からの整理を行いました。次に、従来の災害復興制度や復興基本法を検討することからみえてきた東日本大震災復興の基本的問題点を指摘しました。そこで強調されたのは、災害復興の基本的理念は「人間復興」と「コミュニティと住民自治の復興」であるべきであるという点でした。そして、復興の理念と政策の内実を端的に表す復興予算・復興財源についての考察を行いました。そこでは、復興財源調達として押し進められている「復興増税」が、法人税の実質大減税と庶民増税の進行であり、懸命に立ち上がろうとしている被災地・被災者の復興の足を引っ張りかねない「増税」であるというパラドックスが描き出されました。
復興の理念との関係から
復興財政の問題点を指摘する宮入氏
 
報告2:井上博夫氏(岩手大学教授)
「震災復興財政 ~国・県・市町村財政の現状と課題~」
 井上氏は、政府間財政関係と公私分担関係という二つの観点から、震災によって財政に変化が生じたのかどうかを検証しました。国の財政措置が従来の政府間財政関係の枠組みのなかで、地方団体に対する財政支援を量的に拡大したものであるということや、特別交付税による基金のしくみ自体は阪神大震災の時に既に導入されていたものであるということから、政府間財政関係においては従来からの大きな変化は生じていないという見解を示しました。また、公私分担関係に関しては、事業者の私有財産に関わる支援制度の若干の変化はあったものの、個人に対する新たな支援制度はほとんどみられないという考察結果を示しました。そして、そういった状況で県や市町村の財政がどうなっているのかについて、岩手県および大槌町の復興予算の現状を検証し、課題を提示しました。
国・岩手県・大槌町の復興予算の検証から
見えてきた課題を提示する井上氏
 
質疑応答・意見交換
 両氏の報告を受け、まず、国の復興予算の執行状況について、特に、不用額とその扱い、企業への支出などについて議論されました。
 次に、復興庁の役割に関して、ワンストップで各省庁につなぐことができるようになったという点で、窓口や調整機関としての一定の機能は果たしているのではないかという意見が出た一方で、かえって煩雑になった側面もあるのではないかとの指摘もありました。
 その他、復興交付金の申請の際に計上される経常費用の中身に関することなど、復興財政の大枠から細部に至るまで、盛んな意見交換が行われました。
 最後に、今後のスケジュールについての確認を行い、第11回の全体会合は閉会となりました。

 
JEC 日本環境会議