持続可能なアジアをめざす APNEC9京都宣言

 2009年11月20(金)~21日(土)、「第9回アジア・太平洋NGO環境会議」(以下、APNEC9京都会議)が、日本のほか、韓国、中国、台湾、ネパール、タイ、マレーシア、シンガポール、インドネシア、フィリピン、オーストラリア、ミクロネシア連邦、アメリカ、ドイツからの海外招聘者を含め、14の国・地域から、約200名の参加者を得て、非常に充実したプログラムで開催された。

 「アジア・太平洋NGO環境会議」(以下、APNEC)は、1991年12月にタイのバンコックにおいて第1回の会議(APNEC1)を開催して以来、20年近くにわたり、アジア・太平洋地域における環境分野の研究者、専門家、NGO、関係市民の情報交換と相互協力の促進のための独自なネットワークづくりを地道に積み上げてきた。

 今回の第9回の会議は、1994年11月に開催した第3回の会議(APNEC3、於・京都)以来、世界に誇る歴史文化都市であり、また、最近では京都議定書が採択された都市としても世界に知られるようになっている京都の地において、15年ぶりに開催されたものである。

 21世紀の前半の今日、アジア・太平洋地域は、巨大な人口を擁し、経済発展が著しい地域とともに、なお貧困な地域も少なからず抱えている。この地域では、近年のグローバリゼーションの進行のなかで深刻な経済格差が広がりつつある一方で、さまざまな公害被害や資源枯渇、環境破壊の問題の解決にも迫られている。とりわけ、この地域は、今日の地球社会の縮図ともいえる幾多の諸課題に直面しており、当該地域のこれからの経済発展のあり方いかんによって、気候変動問題や生物多様性保全をめぐる問題をはじめ、まさに地球環境の近未来が決定的に左右されるといっても過言ではない。

 そうしたなかで、今回のAPNEC9京都会議では、(1)「民主化・地方分権化と環境ガバナンス」、(2)「環境公益訴訟と被害者救済」、(3)「廃棄物問題と国際リサイクル」、(4)「アジア環境協力」という4つの重要な課題に焦点をあてたテーマ別セッションと3つの自由論題セッションが設けられ、それぞれに有意義な情報交換と活発な討議が行われた。

 2日目(11月21日)の午後には、京都市および京都府とも共催して、「持続可能な低炭素社会をアジアから!」と題した市民公開シンポジウムを開催し、12月初旬にコペンハーゲンで予定されている気候変動枠組み条約の第15回締約国会議(COP15)に向けた京都からの市民メッセージを発信した。メッセージは、すべての国々に対して、気候変動に対する政策や対策を飛躍的に加速させるような意欲的な合意をCOP15で締結できるように、また、持続可能な低炭素社会を実現する意志を示すために、各国がイニシアティブを発揮することを求めている。

 APNECは、今回の会議の成果を踏まえ、今後、さらに以下の取り組みを推し進めていくことを確認し、ここに宣言する。

  1. 地球温暖化防止、生物多様性保全をはじめとした地球環境保全への具体的な取り組みをアジア各地から推し進め、「持続可能なアジア」の実現をめざす。
  2. 「持続可能なアジア」を実現していくためには、アジア・太平洋の各国・地域で各種の公害被害の救済や資源・環境問題の解決に取り組んでいる研究者、専門家、NGO、関係市民が国境を越えた情報交換と相互協力のための多面的で重層的なネットワークづくりをさらに促進し、発展させていくことがますます重要になっている。APNECは、このような独自のネットワークの役割を認識し、その強力な構築にむけて、一層の努力を継続する。
  3. 近年の急速なグローバリゼーションの進展のなかで、アジア・太平洋の各国・地域間における経済面での相互依存がますます強まっている。そうした背景のもとで「東アジア共同体」や「アジア経済共同体」をめぐる議論も高まりつつあるが、その前提として、アジア・太平洋は環境面での相互依存も非常に高い地域であるとの基本認識がきわめて重要である。APNECは、以上の認識を踏めて、今後、国連やAPECのような国際機関等とも連携しつつ、各国・地域の個別的利害や企業的利害を超えた地球環境保全のために「アジア共通環境政策」の確立に向けた取り組みを推進する。
  4. 上記のような今後の取り組みのために、これまでのAPNECの組織体制や対応能力の強化を図るとともに、この組織とネットワークを担う新たな人材の幅広い結集と次世代への継承に力を注ぐ。

 最後に、次回の会議(APNEC10)は、台湾からの提案を受けて、2011年に台湾で開催されることが承認された。

2009年11月21日(土)
第9回アジア・太平洋NGO環境会議(APNEC9京都会議)

 
JEC 日本環境会議