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4回アジア・太平洋NGO環境会議

アジア・太平洋地域の環境NGO間の協力に関するシンガポール宣言

  シンガポールで開催された第4アジア・太平洋NGO環境会議には、NGOのリーダー、大学の研究者、環境に関連する科学、人文科学、教育、政治、経済などの諸分野の専門家たちを含め、アジア・太平洋地域の15ヶ国から90名が参加した。2日間の会合でとりあげられた環境をめぐる諸問題は多岐にわたるが、そのうちのいくつかは、とくにアジア諸国が直面している近年の経済危機に起因し、以前にも増して深刻なものとなっている。討論された諸問題は、a. 環境と現状と未来、b. 管理の手法と戦略、c. 一般市民、政府および研究機関の諸問題への関わり方、d. 各国、地域、地球規模での諸問題、e. 持続可能な発展、f. NGOの役割、g. 資源とエネルギーの利用・政策・手段、h. グローバル・ガバナンス、CO2排出と気候変動、市民社会の役割、i.さんご礁と海洋環境の保護、j.森林の保全、k.ジェンダー問題、l.管理における地域コミュニティの役割強化、などであった。

 参加型の森林管理は、人間生活の質的向上のためのみならず、持続可能な森林管理の効率性という点からも、アジアの森林管理において重要な課題の一つとなりつつある。地域住民の参加が法律上制度化されているような国々にあっても、その実施の過程においては克服されねばならないいくつかの障害がある。他方、住民本位の森林管理システムの欠如が批判されている国々においては、そうした管理システムを支援し、確保するための法的な制度を早急に発展させていかねばならない。

 エネルギーと気候変動をめぐる問題は、利害関係者たちの参加を通じてのみ解決可能である。こうした利害関係者のなかには、一般市民、地域コミュニティ、企業、そして、地方、地域、地球規模のあらゆるレベルにわたる政府機関が含まれる。これらの利害関係者が参加した行動こそが、エネルギー資源の有効な利用と長期的な持続性を保障する鍵となる。とりわけ焦点となる二つの分野は、エネルギー効率の向上と再生可能エネルギー技術の促進である。この究極目的を達成する上での当面の目標は、そのプロセスを促進するために、気候系に負荷を与えない適切な制度的・財政的な仕組みと政策を採用することである。

 海洋資源については、市場の需要に起因して過剰な収奪が続いている。問題をさらに複雑化させているのは、不適切な土地利用慣行や持続可能ではない海洋環境の利用による海洋生息地の劣化である。統治機関が管理能力を欠いているような地域においては、地元の地域コミュニティを基礎とした参加が有益である。また、統合的な沿岸域管理も広く行われる必要がある。

 会議の参加者は、アジア・太平洋地域においては、環境保護に対する一般市民の姿勢、環境管理に対する政府の姿勢、環境管理の優先順位、環境に関する意識や教育の水準、環境管理の能力、NGOの役割とその有効性、気候変動や生物多様性等の地球規模の環境問題に関する国際交渉における見解など、多くの相違点があることを認識しつつ、他方では同時に、この地域には、次のような環境と開発をめぐる多くの共通した諸課題や諸問題、すなわち、a.すべての国において、貧困層の生活水準向上のための開発が必要であること、b.清浄で健全な環境の維持が必要であること、c.持続可能な方法で自然資源を利用していくこと、d.アジェンダ21(21世紀における持続可能な発展のためのアジェンダ)の指針を環境保護と開発のための行動の基礎とすること、e.アジア・太平洋地域のすべての国が、各々、国から県、市町村のレベルまで真摯にアジェンダ21を実行する必要があること、などを認識した。

 ここに、アジア環境会議として、

(1)すべての環境NGOに対して、各々の国でナショナル・アジェンダ21の実行を確実なものにする活動への積極的な参加を促していくこと、

(2)各国政府、国際機関等による経済回復のための努力が、生態学的に持続可能な発展の追及を損なうことがないよう求めていくこと、

(3)引き続きアジア・太平洋地域の環境NGO間の連携を発展させ、広範なネットワークを構築していくこと、

(4)各国間の情報交換と国際協力を推進するために有効な調整機能を果たす事務局を強化していくこと、

(5)社会経済状況の相違を考慮した上で、他の国が採用可能であるような有効なモデルとは何かを明らかにするために、NGO、政府、大学等の研究機関および一般市民の間のパートナーシップの形成に関する比較研究を進めていくこと、

(6)とくに国境を越えた環境問題に焦点をあてたNGO間の共同プロジェクトを促進していくこと、

(7)気候変動、生物多様性条約等の地球規模の問題に関する国際交渉におけるアジア・太平洋地域としての共通の立場の形成を促していくこと、

(8)気候系に負荷を与えない資源利用に関して、エネルギー、農業、運輸などの分野における適切な政策や対策を促進し、そのための技術開発と協力を促進し、共同行動のプロジェクトを進めていくこと、

(9)エネルギー効率の向上、再生可能エネルギー技術の推進という究極の目的達成のための当面の目標が、気候系に負荷を与えない適切な制度的・財政的な仕組みとそれを可能にする政策措置の採用であるという認識をつくりだしていくこと、

 さらに参加者個々人として、

(1)各自が所属するさまざまな組織を通じて、情報交換、協力、共同行動に積極的に参加していくこと、

(2)1992年リオ宣言の精神に基づく環境管理を支持すること、

 以上、決議する。

 なお、この決議は、2000年10月4〜6日、インドのニューデリーで開催される第5回アジア・太平洋NGO環境会議において見直しを図るものとする。

1998年11月27日
第4回アジア・太平洋NGO環境会議

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