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3回アジア・太平洋NGO環境会議

アジア・太平洋地域における環境NGOの組織的協力と成果の共有をめざす京都宣言

私たち、アジア・太平洋の16の国・地域において国際的あるいは地域で環境活動を行うNGO代表、研究者、教育関係者、弁護士、市民は、日本環境会議、サイアム環境クラブおよびソウル環境クラブの呼びかけに応じて、1994年11月18、19日、平安遷都1200年を迎えた京都で開催された第3回アジア・太平洋NGO環境会議に参集し、二日間にわたって全体会議、分科会および総括会議で報告し、議論を行った。報告と討論の内容は、アジア・太平洋地域における環境問題・環境政策の現状と課題、国際的・地球的規模の環境問題、開発と環境。NGOの活動、その他各国からの報告と広範にわたったが、NGOの視点から、私たちはとりわけ次のことに留意し、確認した。

1. 世界の成長センターと呼ばれる東南アジア・東アジア地域は、その急激な経済発展の反面、さまざまな環境問題に直面している。地域によってその種類や深刻さの程度は異なるが、大気汚染や水質汚濁などの産業公害が人の健康を脅かし、人口の都市集中に加えて自動車問題や廃棄物問題などにより都市が機能不全に陥り、森林の伐採や海浜の開発により自然が破壊され、伝統的な生活スタイルやコミュニティが壊されることにより生活環境が悪化し、アメニティが失われつつある。しかし、こういった環境問題については、この会議で一部報告がなされたものの、それらの全体像については、必ずしも十分な調査研究が行われていないか、あるいは適切な対策が十分にとられていない。

2. これらの環境問題は、各国・各地域の経済政策、産業政策と深くかかわっているが、各国・各地域間の経済的リンケージとも深く関連している。したがって、各国・各地域の経済・産業政策のみならず、国際的な経済の依存関係をも踏まえて、環境政策を展開する必要がある。

3. この地域はまた、その活発な経済活動、人間活動の結果として、地球環境にも少なからざるインパクトを与えつつある。この会議では、熱帯雨林の減少、生物の多様性の減少などが報告され、それらがこの地域において重要な問題となっていることが確認されたが、対策をより進めるために、関係国の対応措置のレビューが必要である。

4. この地域における国と地域の経済発展のレベルには大きな差があり、環境問題の現れ方と環境政策もまた、それに応じて異なっているのが現状である。しかしながら、現実には、これらの問題の根源には、経済発展における環境配慮の欠如がある。各国がそれぞれの責任に応じて環境へのコストを支払うとともに、適切な環境政策の構築を目指して国際協力の枠組みをつくることが必要である。

5. 各国の環境法制はそれぞれ発展しつつあると認められるが、しかしなお環境保全の目的を達成するために十分な法的手法が導入されていなかったり、法システムが十分に機能していないことも少なくないと認められる。今後、この法制度の現状の把握と改善の努力にむけて相互に協力しあうことが必要である。

6. 以上のような問題を解決する一つの有効な手段は、環境問題の各領域で研究し、活動するNGOが、国境を越えて情報を交換し、経験を学び合い、必要かつ可能な場合には、協力して行動することである。

以上の状況を踏まえて、私たちは次にことを決議する。

1. 東、東南、南アジアを中心としたアジア・太平洋の各国、各地域の環境問題の情報を交換し、協力を推進するための恒常的な組織を設置する。

(1) 上記の恒常的な組織として、本日、「アジア・太平洋NGO環境会議」(ASIA-PACIFIC NGO ENVIRONMENTAL COUNCIL:略称「アジア環境会議」ASIA ENVIRONMENTAL COUNCIL, AEC)を発足させる。

(2) AECに理事会を設置する。理事会はAECの活動をまとめ、その方向づけを行う。

(3) AECに事務局を置き、環境調査研究センター、環境教育センターなどのブランチを置く。今後のブランチの設置は、申し出に応じ、AEC理事会で決定する。AECの理事会とその他のAECの組織、およびAECのシンポジウムなど活動の大綱は、別に定める覚え書きのとおりとする。

(4) AEC事務局は、発足より5年の間、韓国・ソウルに置く。事務局の設置をソウル環境クラブに委ねる。5年後については、理事会において別途協議する。

(5) 環境調査センターを日本・東京に置く。同センターの設置を日本環境会議に委ねる。環境教育センターをタイ・バンコクに置く。同センターの設置をサイアム環境クラブに委ねる。

(6) AECの第1回設立記念総会を1995年6月にソウルで開催する。

2. 東、東南、南アジアを中心としたアジア・太平洋の各国の環境問題の情報を収集し、集約し、分析する調査研究活動を協力して行い、NGO版「アジア環境白書」づくりをめざす。この調査研究活動のために、随時ワークショップを開催する。

3. 第4回アジア・太平洋NGO環境会議は、1996年にシンガポールで開催される。

1994年11月19日
第3回アジア・太平洋NGO環境会議

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