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2回アジア・太平洋NGO環境会議

アジア・太平洋地域における環境NGOの協力にむけてのソウル宣言

1. 序文
 1972年ストックホルムで開催された国連による人間環境会議以来、環境と開発に関する多くの国際会議が開催され、条約、議定書、合意がなされてきた。「かけがえのない地球」を守ろうとする試みは、1992年6月のブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開催された地球サミットにおいて、アジェンダ21(21世紀へのアジェンダ)の合意および、生物多様性保全条約、気候変動枠組み条約に集約された。

 その間に、アジア・太平洋地域でも同様に、各地域で直面している地球環境問題に対し多くの提言がなされてきた。こうした努力によって、1991年12月、タイのバンコックにおいて第一回アジア・太平洋NGO環境会議が開催された。そこでの提言やバンコック宣言を受けて、またアジェンダ21に応えて、1993年3月27・28日、韓国ソウルにおいて、第二回アジア・太平洋NGO環境会議を開催した。

2. 主要課題

 アジア・太平洋地域における環境問題はそれぞれ異なっている。その多くは、各国での経済発展の段階の違いを反映したものである。しかしながら、次の2つは共通しているように見える。(1)経済発展のために環境を犠牲にした国の政策と、(2)既に発展した国から発展途上国への環境に有害な技術や廃棄物の移転である。

 かつては清らかで美しい自然で知られたこの地域は、大気・土壌・水の汚染、資源の乱開発、森林や生物多様性の消失などによって急激に破壊されてきた。この地域全体で人々の伝統的知識や生活様式さえもが脅かされており、特に先住民はそうである。

 とりわけ、国境を越えた汚染問題に言及しなければならない。さらに我々のもう1つの関心事は、いくつかの西洋国家がオゾン層や熱帯雨林破壊といった地球環境問題を、経済発展や環境技術が低い地域の経済を犠牲にすることの弁明に利用しようとしていることである。

 このような環境問題に関連している経済発展の最近のパターンは、明らかに長期的には持続可能なものではない。

3. 持続可能な発展 --アジア・太平洋の対応

 アジェンダ21の挑戦に呼応して、次のことが持続可能な発展を推進し、この地域の環境管理を改善するのに重要であると考える。

 第1に、我々は、政府・非政府、豊かな国・貧しき国、あるいは北の国・南の国を問わず、すべてが責任を分かちあうべきである。我々の協力によってのみ、これらの問題を解決することができる。その鍵は、"think globally, act locally" の思想である。そこでは、地域のレベルでの環境管理の政策決定に参加していくことが重要になる。国のレベルでも、地域のレベルでも、また、地球のレベルでも、持続可能な発展のパラメーターの枠内で発展モデルを検証し、再構築することが不可欠である。

 第2に、これらのレベルで協力を達成するために、自由な情報の交換、情報へのアクセス、自由なコミュニケーションの権利が保障され、情報を与えられたもとで意思決定がなされるための制度が保障されることが重要である。

 第3に、自然資源の勘定や、汚染や環境破壊が経済に与える負の影響の標準化勘定を、国の勘定体系に組み入れなければならない。さらに、その地域にふさわしい環境監査の手法が用いられなければならない。

 第4に、将来世代は、彼らが必要とする十分な資源とともに、現在の世代によって汚染されることのない環境を受け継ぐ権利を有する。そのために、我々の世代は経済的不均衡を是正し、公正な取引を保証し、健全な自然環境を回復するように働きかけなければならない。

4. NGOの役割

 NGOとして、我々は政府や産業界を監視し、市民や環境破壊の被害者の声に耳を傾けなければならない。公私の部門での協力関係を強化することは、業界の法の遵守を有効に監視し、汚染除去技術の水準を高めるために必要なもう一つの重要な仕事である。

 我々は、環境保護運動を強化することによって、公正な賠償を実現し、新しい技術の導入を推進することができる。環境汚染や公的・私的企業によって引き起こされた直接的被害にたいして厳格責任の原則を主張する。

 この地域での環境保護運動を統合的に推進することによって、この地域が直面している環境問題に対処するため、研究者と市民組織との間での協力を進める。我々は情報を共有し、スタッフや資材を交換しあうことによって、互いに助け合う。我々は、環境に有害な技術の移転を監視し、クリーンな産業や技術を推進するよう努力する。

 我々は、持続可能な発展にふさわしい開発の倫理が確立される時まで、既存の開発倫理に挑戦し続けなければならない。そのためには、浪費的な消費と非持続的な生産を厳しく制限して、利益の公正な分配によって、持続可能な生活スタイルを確立しなければならない。

5. 合意事項

 我々は次のことを合意した。

(1) 国際的な協力と国家間の密な情報交換を促進するために、我々は早急に「アジア・太平洋NGO環境会議」を設立することに合意した。また、この会議がとりうる組織と活動方針を調査するために、準備委員会を発足させることに合意した。

(2) この会議は、関連するNGOの力量に応じて、適当な時期と場所に、環境調査センター、環境教育センター、天然資源および生物多様性センター、情報交換や持続可能な発展のための情報技術センター、環境政策と法のセンター、持続可能な発展の調査センターの設立を検討する。また会議は適当な時期にニュースレターの発行を検討する。

(3) この会議は、この地域で特に発展途上国をはじめとするすべての国々を援助し、且つ、緊急の環境問題を取り扱うに必要な適切な施設と技術を発展させることを目的とする。

(4) 我々は、この会議に出席できなかった団体も含め、この地域におけるすべての環境NGOの参加と協力を求める。

(5) 「第三回アジア・太平洋NGO環境会議」は日本で開催される。日本環境会議が同会議を組織する。

6. 留意事項

 持続可能な発展の概念の背後にある考え方は、一方では、資源や製品の利用における非暴力的・保全型技術の利用を意味し、もう一方では浪費的な消費を制限することを意味する。さらに、持続可能な発展を成し遂げるために不可欠な、経済的社会的正義を促進するライフスタイルの転換をも含むものである。

1993年3月28日
第2回アジア・太平洋NGO環境会


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